20080318

黄と青  遠くヒマラヤ山脈への祈りにかえて菜の花畑

    モンゴル草原で一番高貴な色は 青。 

    天の色だからだ。 






    モンゴル草原を旅したことがある。 
    あまりにも大きな圧倒的な青の下、馬をはしらせると 
    度々「オボ」に出会う。 
    積み上げられた石の山。 
    彼らの信仰の対象、天と地への祈りをささげる場所。 
    「オボ」は布で飾られていることが多い。 
    青い布。   
    白い布と、黄色い布が混ざることもある。 
    白は西方の民の信仰、黄色は南方のヒマラヤ山脈の民の信仰… 
    それぞれの民の「最も高貴な色」なのだと聞いた。 
    離れた場所の同種の民の信仰に敬意を示し 
    彼らへも祈りをささげているのだろうか。 




白人や黒人の赤ちゃんには、蒙古班がでないらしい。 
それどころか、同じ黄色人種の中国人にも、蒙古班はでないらしい。 
蒙古班、赤ちゃんの時におしりに青い痣ができるのは 
黄色人種の中でも”モンゴロイド”とよばれる人達だけらしい。 
そして”モンゴロイド”は世界のあちこちに散らばっているようだ。 


今となっては出所をさっぱり覚えてないアヤフヤな情報なのだが 
(たぶんなにかで読んだのだと思う) 
この話を知ったとき、私はとっても興奮したことを覚えている。 
まずはびっくりした。誰でも赤ちゃんの時ときはできるもんだと思っていたから。 
そしてじわじわなにか湧き上がるものがあった。 
何の意味があるのかきちんと解明されていない赤ちゃんのおしりの痣仲間が 
世界のあちこちにくらしている!? 

赤ちゃんのおしりに蒙古班ができる人を訪ね巡ってみたい。と思った。 
中学生の頃だか、高校生の頃だか、覚えてないけど、そう思った。 
世界のあちこちの赤ちゃんのおしりを追う自分を想像しては 
くふふ と笑っていた。 
大学に入り、友人Kにこの話をしたことがある。 
笑われるかな、とも思ったけど、真面目に聞いてくれた。 
「いいね!」 

長生きする予定の人生のなか 
時間と心とお金の工面がついたら 
(あるいは、時間かお金か…どれかひとつの都合がついたら) 
赤ちゃんのおしりに蒙古班のできる民を順々に訪ねまわってみよう。 
優先順位の低い長期計画の夢。 
真子の裏ライフワークのひとつ。 


愛しい、青痣をもつ仲間たちはどこに暮らしているのだろうか? 




          日本 

          モンゴル 

          ブータン 

          ヴェトナム 

          アメリカ大陸のインディアン 

          氷の世界に住むイヌイット… 





          そしてヒマラヤ山脈に暮らす チベット人 










チベットが(チベット自治区が)荒れている。 
火が放たれ、人々が殺されている。 
チベットで一番高貴な色、黄色の衣服を身にまとった僧侶たちが 
抗議をし、必死に訴えている。 

中国政府のいうことと、僧侶たちの叫び、ダライ・ラマの語ることば 
それぞれ違う。 
組織的な破壊活動なのか、虐殺なのか。 
真実はどこにあるのか。 

私はどうしたって、チベットよりの意見を持ってしまいがちなので 
(おしりの痣の件もあるし、 
Seven Years In Tibet はすごく好きな映画だし、 
なによりダライ・ラマのことばは私の心にしみいる) 
意見を述べるのは控えなくては。 
どうか中立な立場の国際機関が迅速に真実を調べてくれますように。 
そして平和な方法で、解決を…!! 




モンゴル自治区の子どもたちは、中国語で教育を受けていた。 
私と同じくらいの年の女の子は、教育の途中でモンゴル語から中国語に切り替えられた。 
羊飼いのおじぃちゃんたちは中国語を理解できなかった。 
孫娘と話すのに、モンゴル語−中国語の辞書が必要だ。 
「自治区」っていったい何なんだろ? 







草原を発つとき、首にかけてもらった青い布。 
お世話になった遊牧民からの寄せ書きがしてある。 
中国の文字と、モンゴルの文字が混じっている。 

映画Seven Years In Tibetでは、若き日のダライ・ラマが 
ブラッド・ピット演じる登山家ハラーの首に 
黄の布をかけるシーンがあった。 



    


      草原のオボに はためく布を想う。 

      モンゴル草原で一番高貴な色 青色にまじるのは 

      ヒマラヤ山脈で一番高貴な色 黄色。 




      草原の遊牧民たちは今 

      遠く離れたチベットに祈りをささげているだろうか。 




      赤ちゃんの時に、蒙古班を持つ仲間 

      チベットの平和を祈ってやまない。