20060519

ブナの林に雨降るとき





今日は雨。 
芸工棟三階、アーバンの窓から見えるもの。工場(工房)、研究棟、その間にある木、名工大のグラウンド。 

そして私の瞼にうかぶもの。まだ見ぬ、雨のぶな林。 


四日前、長野県飯山市なべくら高原にあるブナ林を歩いた。その日は晴れだった。 
ぶあつく残る雪の上を案内してくれたのは、林や森が大好きな人。たぶん私の1コか2コ上(4コ上ってことはないだろう…、ただの勘だけど) の彼はすごく楽しそうに歩き、語る。一緒に歩くととっても楽しい。 


うさぎが食べた跡だよ。 

これはリスが食べた跡。 

ブナの木の根元だけ雪がまるく溶け落ちている。これを根空きと呼ぶらしい。春のしるし。 
雪が残っているのに、確かにそこには春がきている。 
眩しく芽吹く若葉と根空き。 

草や薮は雪の下に隠れていて、低い木もなく、枝は高い位置にあるためだろうか、林の中はすっきりとした空間がひろがっている。雪のひんやりとした空気と、木漏れ日がきもちいい。 

ブナ林は爽やかだ。 
ほんとにきもちがいい。 

そう言う私に、Sさんはこう返した。 

「晴れの日の爽やかな林もいいけど、僕は雨の日の方が好きだな。幻想的で。ほら、幹に上から下までずっと跡がついているの見える?あれは水が流れた跡。 
ブナの木って、枝が上に広がったカタチをしているから。雨が降ったとき、なるべく雨を下にこぼさないように、広がった枝と葉っぱが雨を受け止めるんだ。その受け止めた雨を集めて、幹に流す。滝のように。 
だから、雨のブナ林に入ると、全然濡れないんだ。部屋の中にいるみたいに。そして幹のうえを水が滝のように流れているんだよ。 
なんていうか、すごく…すごく不思議なかんじだよ。すごく、いい。雨のブナ林は好きだなぁ。」 


おおきな目をキラキラさせて、うっとり語ってくれた。 
話を聞きながら、私の頭の中では、ブナ林に雨が降っていた。それはすごく神秘的な風景だった。 



雨の日のブナ林。 




私の小さな家を、雨のブナ林にたててみたいな。雨のブナ林にも、すっきり溶け込む、家にしなきゃな。下手なもの、つくれないや。 

とか、こっそり想像を膨らませながら。 



今日の名古屋は雨。 
あのブナ林には今、雨が降っているのだろうか?